保護者の皆様の経験をお子さんたちにお伝え下さい。

生徒さんたちも、現在住んでいる地域とご両親が生まれ育った、或いは暮らしたことがある地域の特色や会社で感じた地域や人の特性などをご両親に聞きましょう。

 現在、国は、地方創生を強力に進めています。その影響を受けて、東京、関西などの大都市圏の大学への門が狭まっていることはご存知のとおりです。

 国の方針である、地方創生の内容を忖度すれば、優秀な学生の皆さんが地方の大学に進学し、地方に智の砦を築き、地方での就職や地方での創業をしていただけるような人材を輩出することなのでしょう。その結果、その地域の大学出身者の流れを作り、先輩が後輩をリクルートすることで地方での人材の定着の流れを確実にするという壮大な構想なのだと思われます。

 私は、2015年から2016年にかけて、内閣府地方創生事業の地方創生アドバイザーとして鹿児島県の地方公共団体に赴任をしておりましたので、国の強い意欲を感じていました。

 人は、年月を重ねると地域の一般常識が身に付きすぎてしまう傾向があります。長く暮らしている地域での常識が、他の地域でも通用するような感覚を持ってしまう場合も少なくありません。

 私は、蕎麦が大好きです。特に、「ざるそば」です。赴任地の近くの志布志市で有名だという蕎麦屋に出向き、「ざるそば」を注文。しかし、期待は驚きに変わってしまいました。蕎麦つゆが砂糖醤油の甘さで「うん?エッ!アレッ」、しかし満席の店内を見回すと、他のお客さんは、違和感なく蕎麦をすすっているのです。でも、鹿児島ではそれが標準でした。もちろん回転寿司でも砂糖醤油が当たり前で、今ではその味をなつかしく思い出しています。

 鹿児島では、お墓が毎日お彼岸のようにお花で美しく飾られています。役所の方に聞いたところ、2-3日に一度は墓参りをするとのこと、東京では毎年1-2回しか墓参りに出向かないと話したところ信じていただけませんでした。どうりで鹿児島には、墓参り代行業者が20数件もある理由が理解できました。

 地方の若者は、家を守る、土地を守る意識が強いことも知ることが出来ました。青年会の会合に挨拶方々出席をさせていただきましたが、青年会の構成員の皆さんのほとんどは、役所の職員。若者が、家と農地を守りながら職責も同時に果たせるのは、役所が最も合理的な職場である状況を垣間見ることも出来ました。

 その他、どこかに出向くと何かをいただくのです。私は、地方創生アドバイザーとしてオフィシャルな仕事中に出向いた先で何かをいただくことはしてはならないと思っておりました。当然に私は、辞退をします。しかし、同行した町の職員の方からは失礼なことをするなとお叱りを受けました。地方では、人と人との繋がりが濃く、そこには、良い面と悪い面が渾然一体である状況も体験しました。

 私の家系は江戸時代から東京暮らし。その頃には、ほそぼそと魚をとって暮らしていた漁師であったようですが、江戸時代には江戸府内ではありません。江戸時代には、武蔵国荏原郡でした。ついでに江戸の範囲を少し補足説明させていただきます。諸説ありますが、江戸の範囲は、品川から四谷、上野、浅草を結ぶ範囲で、現在の、目黒、渋谷、新宿、池袋などの主要地域は、江戸の外です。現在も新宿にお寺が多く見受けられますが、その理由が、江戸の町中には、お寺をあまり作らず江戸の郊外に集めた結果です。

 唐突ですが、タンメンは、東京や横浜(タンメンは横浜が発祥です)では、超メジャーの中華屋さんの定番メニューです。もちろん大人になるまで全国的なメジャーメニューだと信じていましたが、全国的にはマイナーメニューでした。タンメンは、ザックリと例えれば野菜スープ麺です。タンメンが全国的には、マイナーな麺料理であることを知ったのは、テレビのお笑い番組でした。それを知ったときはショックでした。実際に、中京地区以西からバンコクに来た生徒にタンメンと聞いて正確に答えられる生徒は皆無です。答えは、ほとんどの場合で「タンタン麺ですか?」です。地域の当たり前が、大きな目で見ると当たり前でない一例です。

 今では笑い話ですが、20年ほど前に大阪の阪急南方駅に隣接した立ち食い蕎麦屋さんで、タヌキうどんを注文するも、私のイメージするタヌキウドンを食べることはできませんでした。私のイメージするタヌキウドンは、「天かす」が「かけうどん(関西以西では素うどんでしょうか)」に乗ったうどんです。しかし、出てきたのは、油揚げがのった蕎麦でした。私は、「タヌキウドンを注文しましたよね。」と店員の方に一言。お店の方は「タヌキは、お蕎麦」と一蹴。その後、大阪の友人から私の認識違いであることを聞きました。では、私のイメージするタヌキウドンを注文するのはどうするのかと聞くと、「素うどんに天かすかけてんか」で良いとのこと、大阪の一般的な蕎麦屋さんでは各テーブルに天かすが置かれているそうです。流石食い倒れ、太っ腹(東京では天かすは一般的に有料なので)とモヤモヤとした気持ちがやっと晴れました。

 皆さんもそんな経験をお持ちではないですか。旅行に出向くことは、自分の生まれ育った地域の一般常識と他の地域の一般常識の違いを認識するためにも役立ちます。

 自分が暮らしている地域から出て、遠方で暮らすと驚きの連続です。それと同時に、その地域では余りに一般常識の範疇であるため、他の地域ではそれらのものが、新鮮であるという意識を持つことが出来なくなるようです。

 当たり前の知識が、他の地域では新鮮であるかもしれないとの意識を持ち、何かを考えることは、地方創生によって生まれるムーブメントにつながります。現在では、ふるさと納税等で、地方の特産物が以前よりも全国で知られるようになっています。

 しかし、私は、物質的なものでない特産が他の地域で広まらないことを残念に感じています。その理由は、前述したとおり、その地域では当たり前過ぎて新鮮なイメージを抱くことが出来ず、全国に発信する前に「ボツ」となってしまうためです。それらの発信を可能にするためには、都会と地方の若者のエクスチェンジ又はシャッフルをすることは好ましい効果を生むと考えています。

 ここで大事なことは、当たり前を当たり前としか考えない姿勢を変えなければ、その効果が生まれないということです。

 その点につきましては、保護者の皆様の経験が役に立つのではないでしょうか。お子さんたちとのコミュニケーションをとおして、面白おかしく経験をお子さんに伝えてゆくことは、比較文化の意味でも重要です。

 また、比較文化の解釈も、保護者の皆様でなければ出来ないかもしれません。例えば、今回の沖縄、大阪での衆議院議員補欠選挙の結果です。各地域では、その地域の希望が国政に現れる傾向が強くなっているということだと思います。

 例えば、沖縄県への国庫支出金は一人あたりでは全国トップです。しかし、地方交付税は、全国16位(2018年)と低くなっています。地方交付税が決して多くない理由は、労働年齢層が沖縄県では割合が多いということです。高年齢化が進んでいる県ほど一人あたりの地方交付税が多くなる傾向がありますので、若さがみなぎっているということです。

 しかし、大工場などは、地域性からもほとんどないために働く場所は限られています。また、観光が主な産業であるため、季節による雇用需要の増減が激しく、非正規雇用が多くなる原因となっています。当然に、将来的には年金受給額が低くなる方も多くなり、本土と沖縄県の経済格差は大きくなると思われます。

 しかし、沖縄は、家族を大切にする「ゆい」の精神が強く、弱者を家族親戚で守る傾向もあり、非正規雇用であっても沖縄に暮らす方々も多いようです。沖縄では、家族を含めて他の地域よりも故郷を守る意識が強く、政治的な或いは金銭的な保証だけでは、沖縄県民の心を完全には動かすことは出来ない結果が今回の衆院補選の投票行動に現れていると考えています。

 歴史的に見れば、明治時代の琉球処分という文言には差別を感じます。日韓は併合。琉球は処分。第二次世界大戦では地上戦は沖縄だけ、住民の四人に一人が死亡した事実もあります。戦後は、米軍基地が存続し戦争に巻き込まれる恐れが一番強い地域であるが、米軍が居なければ仕事もないとのジレンマが選挙結果に影響していると思われます。

 大阪も同様です。大阪は、大阪であるとの自負が強烈に現れているのが選挙結果です。中央政府は、地方創生をスローガンとしながらも政治的には中央に集約する傾向が強いことも事実です。地方創生を行うためには、中央に人材が必要なことも確かです。地方創生を目指すには、地方の学生が東京や大阪などの大都会の大学で学び暮らすこと、同様に都会の学生が地方で学び暮らすこともお互いを俯瞰するために重要な意味を持ちます。当然に、地方の将来を付託できるような優秀な受験生は、都会の大学を目指す傾向も強くなるでしょう。

 現在、私立大学では帰国子女、ao、推薦入試などの試験での入学者が半数にも及びます。これらの試験は、それまでの経験が合格に直接関係します。他の、優秀な受験生に劣らない経験が何であるのかを、ご家族の中で体験的に共有することは、帰国子女、ao入試で難関大学合格を確実とするための鍵となります。