先ず、なぜこのような状況になっているのかを過去から検証する必要があります。

 韓国の文大統領は、政治家としては「超フレッシュ」な方です。国会議員になって未だ7年です。彼が大統領となった経緯は、志半ばに自死の道を選択した、仲間であり同じ理想により時を歩んだ「ノムヒョン」元大統領の意思を実現することが大きく影響をしています。

 同じ朝鮮民族が一つの国、或いは、同じ理想のもとに動くことができれば、朝鮮半島の韓国北朝鮮は世界的な大国になることが可能と彼は考えています。だから、北朝鮮との融和を最も大事なファクターとしています。

 日本との問題は、1910年から1945年の日韓併合(韓国、北朝鮮が日本の植民地であった時代)の時期に、日本に協力してきた朝鮮民族の敵であった韓国人を洗い出して責任をとらせるという問題。現在、韓国にある日本に協力し韓国人を徴用などの形で酷い労働環境を与えた日本企業への懲罰。強制的に売春婦にされた方々への日本の責任の深さなどを日本が清算をしないと負の歴史が終わらないという強烈な思いが政治に表れています。

 この感情は、彼の生い立ちにから生まれているようです。彼の両親は、北朝鮮地域から韓国(南朝鮮地域)に朝鮮戦争当時に逃れてきた人です。北朝鮮は彼の故郷であり、日本が朝鮮半島を領有したために、第二次世界大戦後の無秩序の中で二つの国に分かれたのは日本の責任だとの考えも持っています。朝鮮戦争がなければ、彼の両親も彼も全ての財産を北朝鮮に残し、親戚知人とも離れ離れになることはなかった。そのことへも何もしなかった日本への恨み(朝鮮語=韓国語も恨みの意味には、恨み、妬み、ひがみなどが含まれます)も、彼の政権支持者が共有できる問題意識です。

 よって、文政権は今の日本に恨みがあり復讐したいとの思いというよりも「過去の問題を、韓国的な視点に重点を置いて日本は清算してくださいよ!」と述べています。

 しかし、日本は、国民感情として条約や協定などの約束や決まり事を大事する国民性があります。日本と韓国との問題は、その落差に埋められない溝があります。

韓国では、過去の韓国政権が民主的な手続きによって日本との問題を解決したのではないと文政権は国民に訴えています。文政権も含めて韓国の政治の在り方は、最初に掲げた理想を愚直に目指す、理想を追求する傾向にあります。

 文政権による非正規雇用の根絶などの公約の実行もその例です。

 日本では、公約は理想であり決まり事ではないとの感覚を国民の多くが共有しています。当然に現実とのすり合わせは容易ではないことも国民が理解しています。しかし、韓国の文政権は、理想を現実に持ち込む動きが顕著です。ポピュリズム(特に労働者層の)をバックに理想に向かって政治を進める手法は、景気の悪さに輪をかけています。

 日本は、選挙の際の公約を、現実に合わせて、よく言えば「現実的」に変えていきます。しかし韓国は、理想に向かって走りすぎるために、現実との乖離がおきる傾向が強烈です。そのため、次に対抗政権が生まれれば、次の理想により糾弾される悪循環が続いています。

 韓国の民主主義はポピュリズムに根差していることが条件であり、民衆が政権に疑問を持ち、民衆の理想を実現できる政権ではないとされた時には、次にそれを煽るポピュリズム先導者によって葬り去られます。

 理想主義の韓国と現実主義の日本との間の温度差が、相互の国の理解から目を背ける現実を生んでいることは悲しむべき状況です。