社説は、マスコミの責任ある立場の人々が執筆しています。社説は一般的に小論文のように、序論、本論、結論の形式で書かれていますので、受験生の皆さんは社説を読むと社会に起きている物事を小論文として自然に理解できるようになります。

私が、バンコクのインターナショナルスクールの先生を務めていたときに、国連系のインターナショナルスクールのNISTを訪問したことがありました。NISTは、日本からの高校生が入学できるチャンスは、一部の方々を除きほとんどありませんが、現在も小学校からNISTで学ぶ日本人生徒が在籍しています。

NISTの日本人生徒向けのJapanese授業では、日本の中学2年生にあたる学年で授業の際にバンコクで発行されている読売新聞の社説の要約を行っています。また、中学二年生にも関わらずJapaneseの授業の教材に、安部公房『赤い繭』が用いられ、生徒たちは、要約や解説文作成に取り組んでいます。

安倍公房は、ノーベル文学賞を受賞された大江健三郎さんの「お師匠」さんです。

安倍公房の赤い繭は、中学生では、ほとんど理解不能と思われる難解でシュールな小説です。では、学校が日本語の図書が揃っている図書館が全くないバンコクで、何故そんな難しい課題に取り組ませるのか。それは、両親の資質に学校が期待をしているからです。

NISTは何故に、日本人高校生を受け入れないのか、その理由を、英国人のNIST入学担当責任者の先生にお聞きしました。先生が仰るには、「生徒だけではなく親御さんとのコミュニケーションを確実にとるために、入学希望の親御さんが英語の書類の理解や会話に問題があると判断した場合には、入学はできない」とのことでした。このことは、NISTが親御さんとのコミュニケーションを如何に大切にしているかという表れであり、英語が出来ない日本人を見下しているものではありません。NISTの学校の授業の難易度は高く親御さんのフォローがなくては学業の完遂が難しいとの見解です。

Japaneseの授業でも、世の中を見る目を社説を用いて語彙力を高め社会を見る目を養ってゆく姿勢が見られます。

日本では、残念ながら「社会科」の重要度が低いようです。しかし、私たちは社会に生きているのであって社会科的素養が高くなければなりません。関西のインターナショナルスクールのカリキュラムを見るとハイスクールで社会科科目が4-5科目となっています。今後の日本の受験では、自分の目を通して社会を見通すことができる生徒が受験に勝ち残る条件となります。

そのためには、社説の理解が有効な手段となります。

朝日新聞は、右派、左派のどちらかに分ければ左派よりの見解をとる傾向が強い新聞です。

イデオロギーの問題を述べているのではなく、人が公平に幸せを追求すれば社会主義的な傾向が強くなることは自明です。

私自身は、残念ながら人に欲がある限り公平な世の中が実現することは困難だと思っています。

しかし、受験生はそれを否定するのではなく、夢に向かっての創造と想像を豊かにすることが必要です。

理想を熱く語れる人、それも論拠に基づいて理路整然と論述できることが、大学受験では求められていることを理解して下さい。

そう考えると、大学の小論文入試問題に朝日新聞の社説などのモチーフが用いられる理由が見えてきます。